|
|
「十四歳―見失う親 消える子供たち」(井田真木子)、書評バブルが崩壊した90年代前半頃から、薬物使用と風俗業の低年齢化、素人化が進んだと言われる。 本書「十四歳」は、それら風俗業と薬物使用の日本とアメリカでの実態を追ったルポルタージュである。 本書は、日本にいるある少女とアメリカでストリートサヴァイバーに対する援助を行なっているLSYCへの取材から成り立っている。 基本的に、筆者自身は風俗業と薬物使用そのものの善悪を問うているわけではなく、若年層におけるアメリカと日本における風俗業や薬物使用に関する事実をインタビュー形式で追おうとしている。 特にLSYCで実質的に活動を主催するロジャー氏のコメントは、経験に裏打ちされており、重みがある。 「救いがたい子供というのがいるんだ。麻薬で完全におかしくなった子供、尻のポケットにピストルを隠してLSYCのグループセラピーにやってくる子供、人を殺すことをなんとも思っていない子供。・・・ 大人が多種多様ですばらしい奴もいれば、どうしようもない奴もいるとするなら、子供も同じなんだ。」 「俺は現実主義者だ。人間が人間を改心させて完璧な人物にするなんて無理なことだ。 俺はその人の現実を見る。現に売春でしか稼げないのなら、いきなりやめさせたり家に帰るように説教したりするより、まずその仕事を安全なものに切り替えさせることだと、俺は思う。」 「俺は子供たちが好きさ。なるべく一人でもサヴァイバーの子供が命を落とさないでいてほしいと思っている。だが、前にも言ったように現実には救いがたい子供というものがいるし、そういう子供に必要なのは警察での隔離だ。NPO活動ではない。・・・ キャンディがなければ近寄ってこない子供は、何をやってもLSYCに接触してこない子供だ。絶望的な話だが、これが事実だ。」 同じように風俗業に関わる人間でも、金銭的に非常に切迫した状況にいる人もいれば、帰るべき家がある人もいる。 性を売ることにこだわりを持つ人間もいれば、性を売ることに躊躇いを感じない人間もいる。 性を売ることを悪いと言っているわけでもなく、薬物が絶対悪であると言っているのでもない。 LSYCでは、性病や薬物中毒になることを避けるため、コンドームを配付し、風俗業の安全化を図っている。 日本では、新風俗営業法により、あまりにひどい風俗業を取り締まり、かわりにある程度の風俗業を許す方向に動いている。 それが、恐らくはもっとも現実的な解決策だからだろう。 人類史上、もっとも古い歴史を持つ風俗業。そこには、善悪や、合法性、違法性だけではない、多くの難しい問題が含まれている。 ※ストリート・サヴァイバー:十代終わりから二十台初めの若年層で性行為を売る人々の中でも、帰ることができる家はあり、明日にも餓死する状態ではないが、家に帰ることのない若者のこと。
ところで、本書の中で、コンピュータネットワークの発展に伴い、悪質な性産業は見かけ上、表舞台から姿を消すのではないかと述べられている。合法性や違法性、或いは、性産業そのものの善悪は別にして、インターネットの有効性を最もよく理解しているのは、風俗産業やギャンブル産業など、社会的には、あまり評価されていない産業ではないだろうか。 例えば、それは商用広告を出している出会い系サイトや、ビデオ販売サイト、結婚紹介サイトの多さなどにも現れている。 商用広告を出しているお見合い、紹介サイトや、アダルトサイトの一端を示すため、以下にサイトを挙げておく。 (同種のものは、この他にも多く存在するようだが、趣旨と離れるため、ここでは挙げないでおく。)
|
Copyright(C) 2002 - Mitsuharu Matsumoto All rights reserved.